医科器械学
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浸漬洗浄の温度効果の検討
渡辺 志保藤田 和子大森 しづ子堤 タマエ松田 和久柴田 勝池田 英夫
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2003 年 73 巻 4 号 p. 227-

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抄録

器材の洗浄方法には,ジェット式洗浄方式や超音波洗浄方式など様々な洗浄方法があるが,長期間放置した物品の洗浄や構造上洗浄が難しい物品の洗浄を実施する際には,幾械洗浄を行う前に予備洗浄として酵素系洗剤を用いての浸漬洗浄を実施することにより機械洗浄の洗浄効果が向上するといわれている.そのような浸漬用の洗剤には主に酵素系の洗剤を用いるが,その中に含まれている酵素は,低温下では活性が悪く洗浄効果も低下することが知られている.しかし,大多数の施設においては,常温下による浸漬洗浄を実施している現状と思われる.今回,酵素系洗剤の能力を十分発揮させるために,電気ヒータ付きの水槽を用意し,常に最適な温度状況下を維持させた場合と常温下での浸漬洗浄後の洗浄効果を比較したので報告する.[方法]手術に使用し汚染された器材を,常温浸漬洗浄と温水浸漬洗浄し,その後,洗浄後の物品のATP値を測定し,洗浄度合いを比較した.[結果・考察]常温の洗浄液にて浸漬洗浄を行った場合には,浸漬洗浄直後の洗浄効果も温水使用時に比べ低下したばかりか,機械洗浄の洗浄効果についても低下していた.これは,温水使用において酵素活性が高くなっていたために,汚れが多く分解されており,その後の機械洗浄の効果の促進に影響したものと思われる.この結果より,効率よく浸漬洗浄行えば,洗浄効果が向上するため,洗浄不良のリスクが軽減することが示唆された.

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© 2003 一般社団法人日本医療機器学会
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