日本視能訓練士協会誌
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一般講演
白内障手術前後の眼位・立体視変化
干川 里絵伊藤 美沙絵清水 公也天野 理恵石川 均
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2012 年 41 巻 p. 89-94

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抄録

目的:両眼白内障手術前後の眼位と近見立体視の変化について検討した。
対象と方法:両眼に単焦点眼内レンズを挿入した50歳以上の88例(男性19例、女性69例;平均年齢68±8歳、平均眼軸長23.9±0.9mm)を対象とした。対象症例の基準は、白内障手術前に上下偏位を認めず水平偏位は斜位を保ち(近見の外斜位角度:2⊿~16⊿、遠見の外斜位角度:0~14⊿)、術後1.0以上の矯正視力を有した症例である。測定距離に応じた屈折矯正の下で眼位は交代プリズム遮閉試験、近見立体視はTitmus stereo testを使用し、術前から術後5年にわたり経時的に測定した。
結果:術後5年の明らかな眼位変化は近見時で認められ、11.4%の症例が術前の外斜位から術後に間欠性外斜視や外斜視へ移行し複視を自覚した。この斜視化した症例の術前の近見外斜位角度は12⊿以上であった。遠見時に斜視化した症例は認められなかった。術後5年の近見立体視は中央値50 seconds of arc(arcsec)で、85%の症例が正常範囲の100 arcsec未満であった。
結語:白内障手術前に近見外斜位角度が12⊿以上の症例には、術後に複視を生じる可能性があることなどを含めた情報提供とともに長期にわたる経過観察が重要と考えられた。

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© 2012 日本視能訓練士協会
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