九州病害虫研究会報
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シクラメン炭そ病に対する品種間差異,病原菌の諸性質,感染と伝搬,ならびに薬剤感受性
小林 紀彦
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1994 年 40 巻 p. 75-81

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抄録

1) 現在,栽培されている主要品種であるパステル系のパステルベートーベン,パステルバッハ,パステルシュトラウス,パステルショパン等は本病に弱く,在来系品種のビクトリア,在来赤等は抵抗性であった。また,感受性品種ローズピンク葉における病徴発現は胞子接種後3日でみられ,その後拡大し,やがて葉柄にも病徴が現れ,最終的には株もとの芽点も侵害されて萎ちょう,枯死した。
2) 残さ入り汚染土壌に健全シクラメンを移植して頭上潅水と底面吸水で管理すると,頭上潅水では土壌からのはね返りで株もとの葉裏や葉柄に病斑を形成し,次第に上部へと進展した。一方,底面吸水で管理すると発病はほとんどみられず本病のまん延は胞子の飛散によることが明らかとなった。
3) イチゴ罹病株(Coltetotrichum acutatum)に感受性品種ローズピンクを隣接して頭土潅水で管理するとイチゴ罹病葉と接触している部分から病斑が形成され,次第にまん延していく。最終的には萎ちょう,枯死した。
4) シクラメン炭そ病菌(Colletotrichum gloeosporiaides)をイチゴとよのかならびに女峰に接種すると両品種とも葉に病斑が形成される。発病程度は女峰の方が激しく,とよのかよりも萎ちょう,枯死するのが早い。
5) シクラメン炭そ病菌の栃木産菌はべノミルに対して感受性が高く,熊本産菌はジエトフェンカルブ剤に感受性が高かった。一方,イチゴ炭そ病菌はべノミル,プロシミドン,ジエトフェンカルブ剤に対して感受性が低かった。農薬としてはプロピネブ剤が予防及び治療に顕著な効果を示した。
6) シクラメン炭そ病菌は子のう殻を形成する。完全世代はGlomerella cingulataである。

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