産業動物臨床医学雑誌
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症例報告
ホルスタイン種乳用牛におけるB 細胞マーカーの共発現を伴う T 細胞性リンパ腫の1 症例
前澤 誠希 工藤 直人轉馬 創関塚 次郎渡邉 謙一堀内 雅之松本 高太郎古林 与志安猪熊 壽
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2020 年 11 巻 1 号 p. 17-21

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抄録

 5 歳2 カ月齢のホルスタイン種乳用牛が頸部腫瘤を主訴に受診した.身体検査により,左頸部の皮下腫瘤および体表リンパ節の腫大が認められた.左浅頸リンパ節の細針吸引生検で,中から大型の異型リンパ球が70% 認められた.血液および血液生化学検査では,リンパ球の増多,乳酸脱水素酵素活性およびチミジンキナーゼ活性の高値が認められた.牛白血病ウイルス(bovine leukemia virus : BLV)遺伝子およびBLV 抗体は陰性であった.病理学的検索では左頸部,左胸部および左腋窩部の皮下に腫瘤が認められた.加えて,腹腔内および骨盤腔内にも腫瘤が認められ,概ね全身のリンパ節は腫大していた.腫瘤および腫大リンパ節の病理組織学的検索では大型独立円形の腫瘍細胞がシート状に増殖していた.免疫組織化学では,ほとんどの腫瘍細胞はCD3 陽性であり,一部の腫瘍細胞ではBLA-36 およびCD20 陽性であった.蛍光二重免疫染色ではCD3 およびBLA-36 を共発現している腫瘍細胞が認められた.以上の所見より,本症例はB 細胞マーカーを共発現するT 細胞性リンパ腫と診断された.

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© 2020 日本家畜臨床学会・大動物臨床研究会
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