繊維機械学会誌
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仮撚加工法に関する研究
(第3報) 加撚域のフィラメントのマイグレーションについて
穴原 明司北洞 俊明藤田 隆嘉
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1981 年 34 巻 6 号 p. T120-T134

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抄録

目的 仮撚加工時の加撚域の撚りは, フィードローラ直後の常温下でいったん糸に加えられたのち, ヒータ上で糸の昇温とともに逐次付加されて飽和撚数に達する.この加撚形態でのフィラメントマイグレーションについて, 加撚域の糸張力が原糸の走行時の熱応力と加撚糸の構造とによって定められることを用いて解析した.成果1.原糸の走行時の熱応力は, 昇温により応力緩和を生ずる領域では, 次式で表わされる.F (x, T) =C3xc4exp (C5T+C6)ここでx : 熱処理域の伸長率, T : 熱処理温度, C3~C6 : 定数とする.2.フィラメントのマイグレーション比kを下式で定義すると, PET (延伸糸) ではkはおおよそ0.6~0.9の範囲にあり, 相当激しくマイグレーションが起っているが, 完全ではないことが明らかとなった.この海の値は, 仮撚加工条件がオーバフィードほど, 加工温度が高いほど, 撚数が低いほど低下する (マイグ・レートしにくくなる) ようである.k=xfNθ-xfθ/xfNθ-xfMwhere, .xfθ, xfMここでxfθ : 加撚糸内の撚角度θの繊維の伸長率, xfM : 完全マイグレーションした場合の繊維の伸長率xfNθ : 完全非マイグレーション時の撚角度θの繊維の伸長率とする.3.仮撚加工時のマイグレーションが不完全なため, 加撚糸内の外周繊維ほど大なる伸長変形を受けるが, この傾向は仮撚数とともに急激に増大する.4.高配向未延伸糸 (POY) の走行時の熱応力は, 延伸糸に比べて条件変化に対する変化に乏しい.インドロー延伸仮撚時の加撚域の糸張力は, kの影響をほとんど受けず, ほぼ撚数のみによって決定される.したがってマイグレーションについての知見ば得られなかったが, 延伸仮撚による加工糸のフィラメント間の太さむらは, 延伸糸からのそれよりかなり激しいことが観察された.

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© 一般社団法人日本繊維機械学会
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