第四紀研究
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渡島半島,江差砂丘の構成粒子からみた理化学的性状
谷野 喜久子細野 衛鈴木 正章渡邊 眞紀子青木 久美子
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2003 年 42 巻 4 号 p. 231-245

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抄録

渡島半島江差における大間段丘(海抜50~65m)上に分布する江差砂丘には,シルト画分と砂画分に明瞭な二つの粒度ピーク(bi-modal)が認められ,砂丘構成粒子の給源が複数あることを示唆する.活性アルミニウムに富む(pH(NaF)≥9.5)こと,H2O2処理後の色特性(a*,b*値)が褐色ローム層と同一水準の黄色系を示すことから,同砂丘には風化テフラ物質の混入が予想される.また,鉱物組成(63~125μm)は単斜輝石,斜方輝石,角閃石,火山ガラスなどを含む.他方,砂丘下位の段丘面上を覆う陣屋ローム層は主として粘土・シルトからなり,一部の層準を除きpH(NaF)≥9.5である.また,少量含有する砂画分粒子の鉱物組成は江差砂丘砂と同じである.これより同層は一次・二次テフラを主体とし,さらに周辺域の地層・岩石から侵食・風化作用を受けて生成された物質が加わった堆積物と考えられる.以上のように,江差砂丘と陣屋ローム層は類似した化学・鉱物特性を持つことから,同砂丘の構成粒子のうち,シルト画分を中心とした多くは同ローム層の再堆積物である可能性が高い.このように,主として二次的なテフラ物質の混入が認められ,その化学的性状を持ちあわせた砂丘を「テフリックレスデューン」と呼びたい.加えて,同砂丘中のクロスナ層は黒ぼく土層と同様な化学特性(pH(NaF)≥9.5)と腐植特性(MI≤1.7)を持ち,かつ砂画分が多いことから,「黒ぼく砂層」とするのが適当であろう.

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