近年,製薬企業間の戦略的提携は積極的に行われているが,戦略的提携では企業が別々の組織形態を保ったまま協働するため,そのマネジメントは困難を極める。そこで本研究では,新薬開発の戦略的提携において提携チーム・メンバーの異質性と同質性が研究開発にどのような影響を及ぼすのかについて調査した。
製薬企業に対する質問票調査の結果,異質性は協調性,能力的信頼,知識創造,そして知識共有に正の影響を及ぼすことが示された。また,特に異質的な知識が重要であることが明らかとされた。戦略的提携の目的は新しい候補化合物を見つけ出したり,新しく知識創造することなので,自らの知識とは異なる知識が戦略的提携により求められることとなる。
探索チーム間の提携の場合,協調性を高めるには能力的信頼の果たす役割が大きいため,異質的な知識は戦略的提携の鍵となる。しかし,ここでの異質性とは相手の能力に関するものであり,性格に関するものではない。異質的な知識が求められる一方で,提携相手のメンバーには同質的な価値観や性格が求められている。