医療と社会
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研究ノート
仮設一時避難所検診データを利用したホームレスの健康状態の分析
鈴木 亘
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2005 年 15 巻 3 号 p. 3_53-3_74

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抄録

 本稿は,大阪城仮設一時避難所が入所時に実施しているホームレスの健康診断の検査値データ及び問診,入所時の面接表のデータを利用して,ホームレスの健康状況の実態把握を行った。検診で行われた検査値について,要精検・指導以上と判定された人数の割合は,(1) 最高血圧で26.2%(要医療判定:8.2%),(2) γ-GTPで13.3%(同3.5%),(3) 血糖値で29.5%(同17.3%),(4) トリグリセリドで28.9%(同4.6%),(5) クレアチニンで49.1%となっており,検査値が一つでも要精検・指導以上となっている者の割合は84.7%(要医療:34.5%)に及ぶが,検診時に何らかの治療を行っていた者の割合は8%にすぎなかった。
 次に,入所者の検査値を3健保組合の検診データと比較したところ,要精検・指導以上に入る確率のオッズ比が高かったのは,(1) 最高血圧6.4倍,(2) GOT12.6倍,(3) 血糖3.9倍,(4) 総たんぱく8.4倍,(5) クレアチニン9.8倍,(6) 赤血球数7.7倍,(7) ヘマトクリット5.2倍,(8) トリグリセリド2.4倍,(9) γ-GTP1.8倍などとなった。
 最後に,ホームレス検査値と生活暦の関係を調べたところ,(1) 血圧,(2) 血糖,(3) 総コレステロール,(4) BMI,(5) 総たんぱくにおいて,ホームレス期間が長ければ長いほど検査値が要精検・指導や要医療対象者となるリスクが高まることが統計的に確認された。

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© 2005 公益財団法人 医療科学研究所
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