2005 年 15 巻 1 号 p. 1_3-1_15
本論文では日本の医薬品・バイオ産業分野におけるイノベーション・システムの共進的変革プロセスをマクロ・ミクロ両レベルで検討している。これまでは国家のイノベーション政策などに焦点を当てたマクロレベルの分析,あるいは個別企業のR&D戦略を中心としたミクロレベルの分析が主流であったが,本論文では,両レベルにおける変革の相互作用こそがシステム変革の鍵であると論じている。日本の医薬品・バイオ産業分野におけるイノベーション・システム変革の動向をマクロ・ミクロ各レベルで概観し,それらがマクロ・ミクロ相互にどう影響を及ぼすか,いかなるプロセスを踏んでそうした変革が行なわれるのか,という点を,トランスレーショナル・リサーチ,治験,薬価制度,リサーチツールを例に検討している。また,政策立案に関するインプリケーションも導出している。