日本環境感染学会誌
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原著
新型コロナウイルス感染症の院内アウトブレイクの経過および対策
小倉 明子奈須 聖子𡈽井 朝子
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2021 年 36 巻 6 号 p. 307-315

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抄録

2020年4月に,新型コロナウイルス感染症の院内アウトブレイクを経験した.一連のアウトブレイクにより,入院患者7名,職員29名の計36名の感染が確認された.また,PCR検査は患者と職員合わせて354件,自宅待機職員数は349名となった.感染経路の推定として,新型コロナウイルス感染症と診断されている患者から職員への感染伝播,新型コロナウイルス感染症と診断される前の患者から職員への感染伝播,職員から患者への感染伝播,職員間の感染伝播,新型コロナウイルス感染症に汚染された環境から職員への感染伝播の5つの経路が推定された.アウトブレイク判明後,新型コロナウイルス感染のリスクが高く個人防護具の着用が必要な場所(以下レッドゾーンとする)を,患者の滞在する病室だけではなく病棟全体に広げることによる個人防護具の着脱回数の減少,診断された患者のサージカルマスクの着用,病院に出入りする職員と患者のユニバーサルマスキング,重症部門への入室基準の作成を行った.接触者調査による広範囲な濃厚接触者の自宅待機と,これらの対策による曝露リスクの減少の結果,アウトブレイクが終息した.

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© 2021 一般社団法人 日本環境感染学会
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