日本環境感染学会誌
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原著論文
飛沫核の漏洩を防ぐプッシュプル気流の検討
森本 正一堀 賢田辺 新一堤 仁美平松 啓一
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2011 年 26 巻 2 号 p. 74-78

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抄録

  麻疹や結核など飛沫核感染経路で伝播する感染症では陰圧病室での隔離が不可欠である.これまでの研究で,陰圧病室の飛沫核濃度を低減するレイアウトを提案したが,ドアを開放すると病室内の飛沫核が直ちに廊下へと漏洩する課題が未解決であった.一方,プッシュプル型換気装置は,空間の仕切りとして漏洩を防止する用途では検討されてこなかった.そこで,ドアを開放したままでも病室内の空気が漏洩せず,室圧のバランスを崩さないプッシュプル気流の条件を検討した.廊下と前室の間のドアの代わりにプッシュプル装置を設置することを想定し,数値流体力学的手法を用いて解析した.陰圧病室で発生した飛沫核の廊下への漏洩数で評価した結果,プッシュ装置の風速が0.05~0.3 m/sのとき,飛沫核の漏洩が少なかった.プル装置の風速は0.2 m/s以上,プッシュプル装置の幅は大きいほど,プッシュ装置とプル装置の間隔は広いほど,飛沫核の漏洩が少なかった.また同じ風量の場合,風速を2倍にするよりもプッシュプルの幅を2倍にした方が,漏洩が少なかった.プッシュプル気流は局所排気装置としてだけでなく,空間の仕切りとしても有効である.

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© 2011 一般社団法人 日本環境感染学会
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