社会学評論
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特集・階層論の拡大する可能性
社会関係資本と階層研究
原理問題としての機会の平等再考
三隅 一人
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2009 年 59 巻 4 号 p. 716-733

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抄録

本稿は,社会関係資本のSSM的な階層研究への導入に際して突きあたる原理問題を,機会の平等に照らして考察する.まず,社会関係資本を導入した階層研究の展開をおさえつつ,その導入が改めて問いかける労働市場と社会構造との関係に関わる原理問題を確認する.機能主義階層論のコトバでいえば,それは社会関係資本が抱え込む機会の平等(それが指標する労働市場の機能性)に照らした両義性の問題である.階層研究に求められるのはその両義性をそれとして分析し,社会関係にもとづく機会の平等を語るためのコトバである.本稿ではこの問題にアプローチする例解を思考実験的に示す.それは,当該の社会が初職入職をもっぱら社会関係資本に依存すると仮定した場合,そこでの機会の平等はいかなるものか,そしてそれはどういう階層性を帯びて表れるのか,という思考実験である.また,この思考実験を比較階層文化論の準拠枠に展開する目論見から,国際比較を試みる.2005年SSMの日本・韓国・台湾の調査データでみると,友人先輩関係資本および台湾における家族親戚関係資本は,それへの依存が必ずしも機会の平等を損なうものではないことが示される.また,そこでの移動パターンは,そもそもの学歴バイアスや産業構造の成熟度を反映して国ごとに違いを呈しつつも,それぞれに一定のホワイトカラー階層を生成する力を秘めている.

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© 2009 日本社会学会
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