1997 年 22 巻 2 号 p. 151-154
過去17年間に経験した全胸部食道癌切除例284例のうち, 組織学的口側断端陽性例14例 (4.9%) に関して臨床病理学的特徴を明らかにし, 口側断端因子の予後におよぼす意義を検討した。組織学的口側断端陽性例は, 主占拠部位別にはIu症例が29例中5例 (17%) と最も多かったが, うち3例はCeにおよぶ症例であった。Ceにおよばない11症例中10例は断端のリンパ管内に腫瘍を認める症例 (リンパ管型) であった。また, リンパ管型陽性例10例中6例はn3 (+) またはn4 (+) の高度進行例であった。Im以下の9例中5例は主病巣の口側に壁内転移巣を認めた。術後は7例に放射線療法 (2例には化学療法併用), 2例に化学療法を施行したが, 5例がリンパ節転移, 他の4例が血行性転移で死亡した。しかも, 1年以上生存が3例のみで, 予後は不良であった。一方, 断端再発の認められた症例はなかった。よって, 組織学的口側断端陽性の胸部食道癌症例に対しての術後補助療法は, 化学療法を優先すべきと考えられた。