2014 年 39 巻 5 号 p. 954-958
症例は42歳女性.強い腹痛にて近医受診.婦人科的に異常を認めず,精査加療目的に夜間当院を紹介受診.腹部全体に強い腹痛を認め,圧痛・反跳痛は認めるも,筋性防御は軽度であった.腹部CTでは,虫垂の軽度腫大を認めたが,腹水は認めなかった.白血球は46,600/mm3と異常高値を示し,骨盤腹膜炎の診断にて緊急入院となった.翌朝,腹痛は右下腹部に限局し始め,虫垂炎による腹膜炎の診断にて緊急手術を施行した.虫垂は軽度腫大程度で穿孔は認めなかったが,少量の膿性腹水を認めた.手術は虫垂切除・腹腔洗浄ドレナージ術を施行した.術後経過は良好であったが,虫垂の病理結果にて赤血球を貪食したアメーバ虫体を多数認め,術後10日目からメトロニダゾール内服を開始した.今回,海外渡航歴がなくHuman immunodeficiency virus抗体陰性の女性に虫垂炎として発症したアメーバ性大腸炎の比較的稀な1例を経験したので報告する.