2013 年 38 巻 6 号 p. 1196-1201
症例は73歳の女性で,16年前に胃癌による幽門側胃切除術の既往歴を有していた.嘔吐を伴う上腹部痛が突然に生じ,近医で腸閉塞を疑われて当科を紹介された.腹部CT検査で胃内に層状構造を呈した腫瘤を,上部消化管内視鏡検査で胃内に蛇腹状の腸管を認め,空腸残胃重積症と診断した.内視鏡的に整復が困難なため手術を施行した.手術所見では横行結腸後経路,BillrothⅡ法で再建されていた.また輸出脚空腸が胃空腸吻合部を介して胃内に嵌入し,腸重積をきたしていた.約30cmにわたり空腸が重積していたが,用手整復にて容易に整復できた.重積していた腸管に腫瘤は触知せず,血流状態も良好であった.空腸残胃重積症は胃切除後の合併症としては稀であるが,術後に腸閉塞症状を示した場合には,本症を念頭に置いて早期診断や早期治療を行う必要がある.