1997 年 70 巻 1 号 p. 11-16
流動式微小熱量測定法を用いて, アクリル樹脂の酸化チタン顔料に対する吸脱着熱を測定し, 顔料と樹脂の酸性度, 塩基性度および顔料分散性との関係を検討した。
トルエンと樹脂のトルエン溶液を, 顔料の入ったセルに交互に流し, 吸着熱と脱着熱を測定した。初回の吸着熱は脱着熱や二回目以降の吸着熱よりも大きかった。初回と2回目の吸着熱の差 (△HADSIST-△HADS2ND) は樹脂の不可逆吸着に由来すると考えた。顔料の塩基量が多いと酸性樹脂の (△HADSIST-△HADS2ND) 値が大きくなり, 酸量の多い顔料では塩基性樹脂の (△HADSIST-△HADSIST) 値が大きくなった。中性樹脂に対する (△H△HADSIST-△HADS2ND) 値はほとんど0であった。
各顔料に対し, 中性樹脂を用いた場合と, 酸性や塩基性樹脂を用いた場合に得られる顔料分散ペーストの光沢値の差を△Glossとすると, △Glossはその酸性や塩基性樹脂の (△HADSIST一△HADS2ND) 値と良好な相関性を示した。