色材協会誌
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紫外線硬化被膜による鋼管の防錆処理法に関する研究 (第II報)
プライマー用紫外線硬化樹脂のオリゴマーと物性
新井 哲三大北 雅一新井 邦彦
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1989 年 62 巻 5 号 p. 278-287

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抄録

鋼管外面ポリエチレン (PE) 防食被覆のプライマーに適用できる紫外線硬化型樹脂組成物 (UVプライマー) を開発するため, エポキシ系オリゴマーを主成分とするカチオン重合型並びにラジカル重合型紫外線硬化樹脂の組成と被膜物性の関係を検討し, 最適な主成分オリゴマーを見いだした。
UVプライマーとその上層である無水マレイン酸グラフト変性PE接着剤並びに鋼との接着性は, その中に含まれる水酸基の濃度 (HV) と硬化被膜の内部応力 (σ), ガラス転移温度 (Tg) に影響される。UVプライマーとその上層である接着剤との接着は, 水素結合力の寄与が大きい。従って, HVがUVプライマー100g中に0.22グラム当量以上あれば, 23℃での接着破壊状態は上層接着剤の凝集破壊で, その接着力は十分高い。一方, 鋼に対する接着性は, UVプライマー被膜のσを小さくし, Tgを高くすることにより, 広い温度範囲で保持される。
また, UVプライマーには, 長期の二次密着性が必要であるため, 耐アルカリ性が要求される。この物性には, UVプライマー中のエステル結合濃度 (ELV) が影響しており, UVプライマー100g中のELVが0.33グラム当量以下に抑える必要がある。
以上の要件を満たすエポキシ系オリゴマーとして, 数平均分子量 (Mn) 1,700のラジカル重合性エポキシジアクリレートが見いだされた。カチオン重合性のビスフェノールA型エポキシオリゴマーでは, プライマー被膜のHV並びにTgが低く, ラジカル重合性のエポキシモノアクリレートでは, Tgが低く, オリゴマーとして適用できない。ラジカル重合性のエポキシジアクリレートオリゴマーでは, プライマー被膜のσとTgをバランス良く付与できるMnの最適範囲がある。

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