1984 年 57 巻 4 号 p. 186-192
アゾ化合物を配位子とする第IV族金属キレートの合成と顔料としての性質を検討する目的で, 置換基として電子吸引性基を有するベンゼンーナフタレン型2, 2′ジヒドロキシアゾ化合物を配位子とするチタン, ジルコニウムおよびケイ素キレートの合成を試みた。その結果, 配位子が金属に2分子結合した1 : 2型キレートが得られた。キレートはチタンで黒色, ジルコニウムで赤褐色, ケイ素では茶褐色の粉末状固体であった。これらのキレートの耐熱性および耐光性を, 配位子に電子供与性のメチル基を有するキレートおよび置換基をもたないキレートと比較した結果, 電子吸引性基を導入することによりチタンおよびジルコニウムキレートの耐熱安定性が増加し, 耐光安定性はいずれのキレートでも向上することがわかった。また, これらのキレートのポリスチレン系樹脂に対する着色剤としての性質についても検討した。