日本透析療法学会雑誌
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Hemodialysis施行時におけるセフェム系抗生剤の蛋白結合率に関する研究
特に抗血液凝固剤の影響
黒山 政一熊野 和雄村瀬 勢津子朝長 文弥酒井 糾
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1993 年 26 巻 4 号 p. 525-532

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抄録

血液透析時の抗血液凝固剤としてヘパリン, 低分子ヘパリン, メシル酸ナファモスタットを使用しているHD施行患者の血清を用いて, 代表的なセフェム系抗生剤であるCPM・CET・LMOXの蛋白結合率を血液透析開始直前から透析終了6時間後まで検討した.
抗血液凝固剤としてヘパリンおよび低分子ヘパリンを使用したHD施行患者におけるCPMおよびLMOXの蛋白結合率は透析終了直後に低下し, その後, 経時的に透析前値にまで復した. CETの蛋白結合率は透析終了直後に増加し, その後, 前値にまで復した. CPMおよびLMOXの蛋白結合率は血清中のNEFAと負の相関を, CETの蛋白結合率は正の相関を示した. 一方, メシル酸ナファモスタットを使用した場合の蛋白結合率は, いずれの抗生剤においても, 透析前後で殆ど変動しなかった. HD施行患者における透析前後の経時的なセフェム系抗生剤の蛋白結合率の変動は, 透析施行時の抗血液凝固剤として使用されるヘパリンおよび低分子ヘパリンによりリパーゼが活性化され, 血液中のNEFA濃度が変化したことに関連するものと思われる.
セフェム系抗生剤のHD施行患者における透析後の蛋白結合率は, 使用するセフェム系抗生剤の種類, 抗血液凝固剤の種類により大きく変化し, その体内動態に大きな影響を与える可能性がある. HD施行患者へのセフェム系抗生剤の投与に際しては, このような蛋白結合率の変化にも十分考慮した投与設計が必要であろう.

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© 社団法人 日本透析医学会
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