日本透析療法学会雑誌
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透析患者における末梢血単核球の造血因子 (BPA, GM-CSA) 分泌能の検討 腎性貧血との関連
河野 嘉文高上 洋一阿部 孝典渡辺 力二宮 恒夫黒田 泰弘水口 潤川島 周
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キーワード: 腎性貧血
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1990 年 23 巻 6 号 p. 567-571

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抄録

透析患者の末梢血単核球の造血因子 (BPA, GM-CSA) 分泌能を検討した. 末梢血単核球をPHAで刺激して得られた培養上清 (CM) を用いた分析で, 透析患者では健常人に比較してBPAの低下とGM-CSAの亢進が認められた. このCMは, 赤芽球系前駆細胞 (BFU-E) によるコロニー形成に対し, 濃度依存性の抑制作用を示し, 顆粒球・単球系前駆細胞 (CFU-GM) によるコロニー形成には抑制作用を示さなかった. このことより透析患者では赤芽球系細胞に対する選択的抑制物質が分泌されている可能性が示唆された.
透析導入前後の変化を見ると, 透析導入とともにGM-CSAの分泌が亢進したが, BPAの分泌は変化しないか低下傾向にあった. 同時に末梢血中のCFU-GM数は増加し, BFU-E数が減少し, 造血因子分泌能の変化と相関していた. 一方, 腎移植により透析を離脱した患者では移植後BPA分泌能が改善し, それとともに末梢血中BFU-E数の増加と貧血の改善が認められた.
以上の結果より, 腎性貧血の一因として造血因子 (BPA) の活性低下が考えられ, それは赤芽球系にのみ作用する抑制因子の存在が関与していると思われた.

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