日本透析医学会雑誌
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慢性透析患者の血液透析治療に伴う脈波伝播速度と心拍変動解析に関する検討
末永 多恵子小川 哲也土谷 健秋葉 隆二瓶 宏
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2004 年 37 巻 11 号 p. 1989-1998

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抄録

最近, 非侵襲性で簡便に行える脈波伝播速度測定 (pulse wave velocity以下PWV) が動脈硬化の指標として汎用されているが, 動脈硬化の進展する危険因子を有する腎不全患者において, PWVを測定することは有用であると考えられる. また, 透析前後のPWVは体液量, 血圧によって変動するため, その評価はまだ確立されていない.
今回われわれは, 当院外来透析患者112名を対象に上肢PWV (上腕動脈部PWV, 以下hbPWV)・下肢PWV (前脛骨動脈部, 以下baPWV) を測定し, 動脈硬化に関連するとされる因子との相関を検討した. また, 画像的評価法である十二分割方法腹部大動脈石灰化指数 (ACI) を, 評価指数の一つに加えた. さらに, 各透析治療でPWVの変動する20症例の病態生理的意義を自律神経機能の評価法の一つである心拍変動解析を加えて検討した.
血液透析治療前にオシロメトリック法 (日本コーリンAT-FORM) にて四肢血圧とPWVを測定した. また, 透析終了時のPWV値を上昇群と下降群に分け, 非観血的ヘマトクリットモニターを用いて循環血液量の変動を経時的にモニターし, 心電図から連続する5分間のRR間隔について演算処理し, 平均値を求め, 時間領域解析 (RR-interval SDNN) および周波数解析 (spectral analysis HF, LF, LF/HF) を行った. PWVと各関連因子との相関はそれぞれ, 多変量解析で検討した. PWVは年齢, 血圧と相関が認められ, さらにbaPWVはACIと相関がみられた. 透析終了時に血圧が低下したにもかかわらず, PWVが上昇する群では, やはり年齢, 血圧, ACIと相関がみられ, また心拍変動で, 自律神経機能の低下, 反応パターンの変化が観察された.
透析患者でのPWVは従来の指摘と同様に年齢, 血圧との関連が緊密であるが, さらに, 透析手技による影響を加味した評価では, 形態的な動脈硬化の変化に加えて, 自律神経機能などの機能的変化を反映する可能性が示唆された.

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