日本透析医学会雑誌
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acyclovir脳症を呈した透析患者の2症例
阿部 貴弥飛田 美穂倉田 和久武林 祥裕北村 真平賀 聖悟佐藤 威仲 雷太堺 秀人
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1996 年 29 巻 9 号 p. 1299-1304

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抄録

今日ヘルペスウイルス感染症の治療薬として, acyclovirが一般的に使用されている. しかし腎機能低下症例において, ときに重篤で多彩な神経症状を呈するacyclovir脳症を生じるとの報告を散見する.
今回透析患者において, acyclovirを経口投与開始後, 多彩な枢神経症状を呈し, acyclovir脳症を疑われ, 血液浄化法の施行により症状の改善を認めた2症例を経験した. 症例1は, 43歳, 男性. 35歳時よりIgA腎症による慢性腎不全にてCAPD療法施行中, 帯状疱疹の診断にてacyclovir 4,000mg/日経口開始. 翌日より多彩な中枢神経症状を認め, 直接血液吸着の施行により症状の改善を認めた. 症例2は, 48歳, 男性. 38歳時より慢性腎不全にて血液透析施行中, 帯状疱疹の診断にてacyclovir 4,000mg/日経口開始. 2日後より多彩な中枢神経症状を認め, 血液濾過透析の施行により症状の改善を認めた. 後日両症例ともacyclovirの血中濃度が46.8μmol/l, 41.1μmol/lと高値を示し, 確定診断がついた. なお症例2においてヘルペス感染症に対し, vidarabineを使用し, 重篤な副作用もなく, 軽快した.
透析患者にacyclovirを投与する際は, acyclovir脳症の発現に十分な注意を要し, 不幸にもacyclovir脳症を生じたときは, 早急に適切な血液浄化法を行う必要があり, 血液浄化法は有効な治療法であると思われた. また血液透析患者におけるvidarabineの投与法として, 血液濾過透析を併用し, 通常使用量の半量, 約6mg/kgを血液濾過透析後に, 4時間をかけ持続点滴する方法で, 血中濃度の蓄積も認めず, 明らかな副作用も認めず, 使用することができ, 安全な方法と思われた.

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