近年,山間地などを中心に全国で温浴施設等への薪ボイラーの導入事例が見受けられるようになった。薪は製造が簡単であるというメリットがある一方で燃料投入を人力に頼るため,一定規模以上での利用は不向きであるとされ,100kW以上の規模での事例研究は限定的である。本研究では二つの100kW以上の薪ボイラー導入事例を対象に調査を行った。結果,(1)灯油ボイラー使用時と比較し燃料コストが削減されており,木質エネルギーへの代替率も70%を超え,(2)予測通り人力での薪の投入は薪ボイラー使用者への負担となっている。一方で,(3)薪投入によって追加的な人件費が発生するといった経営面への影響は見受けられず,(4)熱提供の形態によっては利用者側の負荷を軽減できる可能性があることが明らかとなった。