日本森林学会誌
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総説
森林生態系における線虫群集の研究動向と展望
北上 雄大
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 105 巻 4 号 p. 136-146

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抄録

森林生態系は高い生物多様性を有し様々な生態系サービスを提供するが,近年の人為活動が生物多様性の劣化を進行させており,生態系サービスが損なわれている。土壌生物群集は食物網中の物質循環を通して森林生態系の維持に寄与することから,その多様性の維持と向上は重要である。土壌生物の中で線虫は,地球上で最も個体数が多い動物の一群であるため,土壌の生態学的プロセスにおいて重要な役割を果たしていると考えられる。近年,線虫群集の研究の蓄積が増えているが,森林生態系における線虫群集の分布様式を取りまとめて報告した例はない。線虫は微生物と植物根を主要な餌とし,土壌の物質循環を加速することから,様々な生態系で線虫群集を把握することは,土壌の生態学的プロセスを理解する上で重要な情報を提供すると考えられる。したがって,本稿では森林生態系における線虫群集の研究動向を把握し,今後向かうべき方向性を示すため,その多様性,密度,森林生態系への寄与,群集構造を規定する要因,森林の地下部から地上部に生息する線虫の垂直的な分布様式,生物指標としての土壌線虫の応用および,DNA解析を用いた最新の群集分析手法に関する今までの知見をまとめた。

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© 2023 一般社団法人 日本森林学会

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