2019 年 30 巻 p. 132-143
消費者の制度理解の向上のみに依存して適正廃棄行動を促進することには限界がある。たとえば 2001 年から施行されている家電リサイクル法では,使用済み製品の回収率向上は依然として課題である。使用済み製品の回収促進策としてはデポジット制度の導入も考えられるが,預り金の支払いによる製品需要の低下も懸念される。そこで本論は家電リサイクル制度におけるデポジット制度を例にとり,制度に関する情報提示とコストの負担感の軽減の関係について分析した。本論では現行の家電リサイクル法におけるデポジット制度の概形を提示し,行為目標の同定の観点から消費者の製品属性に対する評価への介入モデルの設計を行った。負担感の推定にはコンジョイント分析を用い,テレビを例としてモデルの有効性を検証した。分析結果から預り金の支払いは消費者にとって負担として認識されていること,また同定の操作は負担感の軽減に有効であることが示唆された。