日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
Online ISSN : 2436-5866
Print ISSN : 2436-5793
原著
ダウン症児の滲出性中耳炎に対する早期の鼓膜換気チューブ留置術の有用性
小宅 功一郎富里 周太高橋 希奥羽 譲小林 斉守本 倫子
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 125 巻 10 号 p. 1464-1471

詳細
抄録

 近年, 新生児聴覚スクリーニングが普及したことによって, 1歳未満で難聴の精査のため耳鼻咽喉科の受診をするダウン症児は増加している. ダウン症児の難聴は滲出性中耳炎 (以下 OME) によるものが多いが, その対応については悩むことも多い. 1歳未満で難聴が疑われて受診したダウン症児に対してその後の経過を調査し, またチューブ留置を行った症例の合併症の頻度・再発率・聴力変化を調査することで早期治療介入の有効性について検討した. 対象は2014~2018年に1歳未満で難聴が疑われて初診した92例とし, 受診後の経過を調査したところ92例中22例にチューブ留置を行っていた. 留置が2歳前と2歳以降での合併症頻度を比較したが, 早期に施行したとしても耳漏や永久穿孔の頻度に有意差は認めなかった. チューブ抜去後の再発率は高く, 約半数で再留置が行われており, 繰り返しチューブ留置が必要になる可能性を家族に理解してもらう必要があると考えられた. また22例中20例でチューブ留置前後の聴力検査を施行しており, 留置前の平均聴力は 52.2dB だったが, 留置後は 37.3dB へ有意に改善していた. 10dB 以上の聴力改善は1歳台に留置した11例中10例 (90.9%), 2歳以降に留置した7例中4例 (57.1%) で認められた. 以上からダウン症児に OME が認められる場合には早期からチューブ留置を検討してもよいのではないかと考えられた.

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top