日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
Online ISSN : 2436-5866
Print ISSN : 2436-5793
総説
鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対する分子標的薬
中丸 裕爾
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 124 巻 12 号 p. 1555-1558

詳細
抄録

 慢性副鼻腔炎は多因子疾患で, さまざまな phenotype や endotype を内包する. その中でも高度な type 2 炎症を有する, 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎や好酸球性副鼻腔炎は難治で, 標準治療に抵抗し再発を繰り返す. これら難治の副鼻腔炎に対し近年分子標的薬が適応となった. type 2 炎症を惹起するサイトカイン (IL-4/5/13, IgE) を抑える薬剤が難治性副鼻腔炎に効果が期待できるが, 現時点では IL-4/13 に対する分子標的薬 Dupilumab のみが副鼻腔炎の適応を得ている. IL-4/13 は IgE 産生, 上皮のリモデリング, フィブリンの過剰沈着などに関与する. Dupilumab はそれらを抑制することで, 早期から効果を示す. IL-5 は好酸球性炎症を惹起するサイトカインで, IL-5 を抑える分子標的薬 (Mepolizumab, Benralizumab) を使用すると末梢血中の好酸球は著明に減少する. これらの薬剤も副鼻腔炎に対して有効性が示されている. IgE は肥満細胞に結合し架橋することで, 肥満細胞よりさまざまなメディエーターを分泌する. これらのメディエーターにより浮腫や炎症が惹起される. IgE に対する分子標的薬 (Omalizumab) も副鼻腔炎に対する臨床試験が行われ, 有意なポリープ縮小効果を示している. 難治の慢性副鼻腔炎に対する新しい治療手段である分子標的薬の現状について概説する.

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
次の記事
feedback
Top