日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
耳小骨再建術
小島 博己
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2018 年 121 巻 5 号 p. 651-655

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抄録

 耳小骨再建術の対象となる疾患は慢性中耳炎, 真珠腫性中耳炎, 中耳奇形, 外傷性耳小骨離断などである.

 耳小骨連鎖の形成材料には自家組織あるいは人工材料が選択される. 自家組織は排出率が低いなどの長所がある一方, 周囲構造物とコルメラの癒合による可動障害の問題を伴う. 人工材料は供給が十分であり, 加工が容易で手術時間の短縮に役立つなどの利点があるが, 自家組織に比べると排出されやすく, さらにコストがかかることなどの欠点がある. 非炎症耳では, 人工材料, 自家材料のどちらを使用してもよいと考えるが, 炎症性疾患ではなるべく自家組織を使用すべきである.

 Ⅲ型

 Ⅲ- i 型はアブミ骨とツチ骨との間もしくはアブミ骨とキヌタ骨の間に挿入 (interposition) する耳小骨形成であり, ツチ骨柄が少なくとも残っていることが条件となる. ツチ骨が残せない場合, Ⅲ-c 型としてコルメラを鼓膜に直接接着する. Ⅲ-i 型は直接鼓膜に接しない利点があり, 鼓膜浅在化など術後変化の影響を受けにくい. 術後自家組織のコルメラが術後経過とともに顔面神経管や骨性外耳道後壁などの周囲組織と癒着して可動性が失われることがあるので, コルメラはなるべく細く作成する.

 Ⅳ型

 Ⅳ型が必要となる症例は, ほとんどのアブミ骨上部構造が破壊されており, また奇形や外傷を除けば鼓膜の癒着を伴う場合も多く, 術後聴力成績はⅢ型と比較して不良である.

 Ⅳ型では特にアブミ骨底板に再建材料端が確実に接するように可及的に材料先端を細くし, 再建材料と周囲組織が癒着せず, かつ安定させる. 術中所見での上鼓室粘膜の保存状態, アブミ骨底板の可動性の状態の確認は非常に重要である. アブミ骨の可動性の状態は, 術後成績に強く影響する因子であり, 底板周囲の肉芽や索状物などは確実に除去し, 必ず底板を十分に露出させ, 可動性を確認することが重要である.

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© 2018 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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