日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
中耳奇形の術前診断と手術についての検討
金沢 佑治内藤 泰篠原 尚吾藤原 敬三菊地 正弘山崎 博司栗原 理紗岸本 逸平
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2012 年 115 巻 3 号 p. 158-164

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抄録

当科で2004年から2010年に手術を行った中耳奇形例21例26耳について, 術前検査, 奇形の病態分類, 手術所見, 術式, 術後聴力につき検討した. 側頭骨CT検査で病態を予測できた症例は, キヌタ・アブミ関節離断が12耳中9耳 (75%), ツチ骨キヌタ骨の周囲骨壁との固着が12耳中7耳 (58%), アブミ骨底板の固着が0耳であった (複数病態の重複例あり). 複数の奇形を合併した6例8耳では, 全例で複合する病態を正確には予測できていなかった. 耳介奇形, 外耳道奇形, 鼓膜所見異常を10例12耳に認めた. そのうち9例10耳がツチ骨キヌタ骨の周囲骨壁との固着を伴っており, これらの所見はツチ骨キヌタ骨の固着を予測する上で重要な参考所見と考えられた. 術後1年以上経過した15例20耳 (外耳道形成術を同時に行った症例を除く) の術後経過をみると, 手術による聴力改善率は20耳中18耳 (90%) であり, 不成功例2耳はそれぞれ先天性真珠腫合併例, キヌタ骨体固着, キヌタ—アブミ関節離断, アブミ骨底板固着の合併例であった. このように, 複数の異常の合併例では, より複雑な手術が必要となり, これが不十分な聴力改善につながったと考えられる. 中耳奇形の手術治療に際しては, 側頭骨CTのみならず, 外耳の状態などを含めた術前検査所見を総合して病態のより詳細な把握に努めると同時に, 事前に予測できない病態の可能性について患者へ十分な説明を行っておく必要がある.

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© 2012 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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