日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
鼻副鼻腔非扁平上皮癌 (腺系癌) の臨床的検討
力丸 文秀冨田 吉信
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2009 年 112 巻 1 号 p. 18-24

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抄録

鼻副鼻腔非扁平上皮癌に対する治療指針の参考とするために, 当科における鼻副鼻腔非扁平上皮癌 (腺系癌) の臨床的検討を行った.
対象は1972年3月から2005年3月までに当科で一次治療を施行した鼻副鼻腔非扁平上皮癌28例とした. 観察期間は全例3年以上経過していた. 性別は男性18例, 女性10例で男女比は1.8:1であった. 年齢分布は26歳から87歳で平均57.1歳であった. 原発部位は上顎洞20例, 篩骨洞1例, 鼻腔7例であった. 組織型は腺癌5例, 粘表皮癌4例, 腺様嚢胞癌18例, 腺扁平上皮癌1例であり, 腺様嚢胞癌が全体の64%を占めていた. 病期は上顎洞, 篩骨洞でIV病期が12例57%, であったのに対し, 鼻腔ではI病期が4例57%であった. 全体の生存率は3年生存率で68%, 5年生存率で55%であった. 組織型別の生存率は上顎洞・篩骨洞の腺様嚢胞癌が3年生存率64%, 5年生存率37%で, 鼻腔の腺様嚢胞癌が3年生存率75%, 5年生存率50%であり, 他の組織型に比べ予後不良であった. 腺様嚢胞癌は一次治療後5年以内の再発は11例あり, 再発後の救済率は0%であった. 特に原発巣再発が多く, この再発例11例中6例55%を占めていた. 腺様嚢胞癌の原発巣再発の有無と一次治療内容を比較すると, 上顎洞, 篩骨洞で集学的治療を行った群に原発巣再発が有意に少なかった. 鼻副鼻腔非扁平上皮癌の一次治療においても集学的治療が有用と思われた.

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© 2009 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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