日本耳鼻咽喉科学会会報
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乳幼児早期の難聴の診断と問題点
畠 史子硲田 猛真野坂 彩長谷川 賢作北野 博也
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キーワード: 小児難聴, 問診
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2005 年 108 巻 7 号 p. 742-749

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抄録

乳幼児の聴力の診断に際しては条件詮索反応聴力検査 (COR) などのbehavioral audiometryが基本であるが, 発達途上の乳幼児期の精神・運動発達および種々のコミュニケーション障害を理解した上で的確に評価することのできる耳鼻科医は限られる. 一般の耳鼻科医では聴性脳幹反応 (ABR) などの他覚的検査のみで診断されることも多いが, 他覚的検査のみで診断された場合には実際と乖離した診断がなされる場合があり, 何らかのかたちで音へのbehaviorをみる必要がある. 我々は問診票を用いて家庭での音反応を確認しているが, 生後3ヵ月から4歳未満の79例 (平均年齢: 1歳9ヵ月) を検討したところ, 60dB以上の難聴例では家庭での音反応がなく, 正常聴力では45例中43例で家庭での音反応があることがわかった. また, 精神発達遅滞例でも同様の結果が得られた. 家庭での音反応の情報は乳幼児の聴力の診断に重要であり, 問診であればCORなどの検査機器を有しない施設でも併用することが可能であり, 有用と考えた. 早期診断・早期介入を目的として新生児聴覚スクリーニングが広まりつつあるが, 他覚的検査と問診の結果を総合し, 聴力正常と診断し得ない症例は小児難聴の診断が可能な施設に紹介して診断するシステムを構築することが, 乳幼児の聴力の早期の的確な診断のために必要と考えた.

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