日本耳鼻咽喉科学会会報
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中耳炎の内耳波及と考えられた症例の側頭骨病理
片野 宏明飯野 ゆき子伊藤 茂彦小寺 一興村上 嘉彦
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2005 年 108 巻 5 号 p. 533-536

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抄録

中耳炎の細菌感染が死亡直前に内耳に波及したと考えられた, 30歳女性の頸部食道癌症例の側頭骨病理を検討した. 本症例では, 中耳の炎症所見と共に卵円窓, 正円窓膜から多数の円形細胞浸潤が内耳に及んでいる所見が観察された. 内外リンパ腔には多数の細胞浸潤が見られ, 特に基底回転で高度であった. 内外有毛細胞は一部変性, 消失が見られるものの比較的保たれていた. 蝸牛軸内にも細胞浸潤が認められたが, ラセン神経節細胞はほぼ保たれていた. これらの所見から, 中耳炎が正円窓膜と卵円窓を介して内耳に波及し, Schuknechtの分類での化膿性内耳炎の第二段階の所見と考えられた.

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