日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
耳鳴治療法としての耳管通気法の評価
栫 博幸
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 102 巻 5 号 p. 650-655

詳細
抄録

感音難聴に伴う耳鳴 (感音難聴性耳鳴) 44耳および無難聴性耳鳴10耳に対して, 耳管通気法による耳鳴抑制効果を評価して, その適応について検討した. 感音難聴性耳鳴全体としての通気による耳鳴抑制効果は30% (44耳中13耳) であり, その詳細を検討すると, 耳鳴のピッチが1000Hz以上の高音性耳鳴では抑制効果が10% (31耳中3耳) で, ピッチが1000Hz未満の低音性耳鳴での抑制効果は77% (13耳中10耳) であった. 無難聴性耳鳴では抑制効果60% (10耳中6耳) であった. その詳細は, 高音性耳鳴を示した6耳中3耳 (50%), 低音性耳鳴を示した4耳中3耳 (75%) に耳鳴の抑制が認められた. しかし, 今回検討した54耳において通気後に耳鳴が全く消失したものはなかった. 耳鳴り抑制効果の持続時間は, 高音性耳鳴ではすべてが10分以内であり, 低音性耳鳴でもその多く (69%) は20分~2時間であり, 2時間以上持続するものはなかった. 疾患別に検討すると, 耳管通気法が適応と考えられる耳鳴は次のように考えられる. 1) 感音難聴性耳鳴でピッチが1000Hz未満の低音性耳鳴, 特に, メニエール病や急性低音障害型感音難聴に伴う耳鳴, 2) 無難聴性耳鳴. これらの疾患において, 耳管通気後に一過性の耳鳴軽減がみられるが, 耳鳴が消失することはない.

著者関連情報
© 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top