日本東洋医学雑誌
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臨床報告
瘀血あるいは気滞を除く随証治療で当帰芍薬散証へ導き,当帰芍薬散内服で妊娠出産にいたった不妊の3症例
戸田 稔子塩田 敦子福嶋 裕造藤田 良介多久島 康司能美 晶子
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2021 年 72 巻 4 号 p. 377-382

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抄録

瘀血あるいは気滞を除く随証治療で当帰芍薬散証へ導き,当帰芍薬散内服時に妊娠し出産に至った不妊の3症例を報告する。症例1(39歳)は原因不明不妊患者で,焦燥感に対し桂枝茯苓丸加薏苡仁と抑肝散加陳皮半夏を服用していた。症例2(33歳)は軽度排卵障害の治療中,補助的漢方治療として桂枝茯苓丸を服用していた。症例3(37歳)は原因不明不妊患者で,人工授精も無効であった。月経前症候群に対して加味逍遥散と補中益気湯を服用していた。冷えと易疲労感で当院を受診した。3症例とも漢方医学的な証に応じて当帰芍薬散に変方したところ,早期に妊娠成立した。また,妊娠中も服薬継続して生児の分娩に至った。3症例とも駆瘀血や順気の治療の後,証の変化をとらえ,仕上げに投与した当帰芍薬散が有効であった。不妊に対する当帰芍薬散投与は,随証漢方治療により心身を整え,当帰芍薬散の腹候に変化した際に行うことが重要であることが示唆された。

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