日本輸血学会雑誌
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ヒト顆粒球コロニー刺激因子製剤 (Filgrastim) の輸液装置への吸着と吸着阻止法に関する基礎的検討
佐々木 津大塚 眞美碓氷 規子新井 直美原田 佐保岩上 薫倉田 由美子前田 清子松崎 道男毛利 博大久保 隆男
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1996 年 42 巻 4 号 p. 162-168

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抄録

遺伝子組み替え型ヒト顆粒球コロニー刺激因子製剤 (recombinant human granulocyte colony stimulating factor; rhG-CSF) フィルグラスチムの輸液装置への吸着と吸着阻止方法について検討した. フィルグラスチム濃度はELISAにて測定し, 吸着は回収率 (実測濃度/期待濃度) により評価した. 生理食塩水単独に溶解したフィルグラスチムはIVH用フィルターへの著明な吸着を認めたが, 総合ビタミン剤を添加すると回収率は改善した. 界面活性剤である polysorbate 80 (PS80) を添加することで同等の吸着阻止効果が認められた. これより, 総合ビタミン剤に含まれるPS80が吸着阻止効果を担っているものと考えられた. 総合ビタミン剤の中からネオラミンマルチV (NMV) を選び, NMV添加・非添加のフィルグラスチム溶液を, チューブ, IVH用フィルター, バッグをそれぞれ通過させて回収し, 回収液中のフィルグラスチム濃度を測定した. チューブへの吸着は両群で有意差はなかった. フィルターへの吸着は非添加群でフィルターの種類により顕著に認められたが, 添加群で回収率は有意に改善した. バッグへの吸着は, 大型のバッグで回収率が低下する傾向を認めたが, 両群で回収率の有意差は認めなかった. フィルグラスチムの持続点滴にあたってはフィルターおよび大型のバッグへの吸着に留意すべきであることが示された. フィルグラスチムと総合ビタミン剤は, IVH施行中の患者でしばしば同時に投与される薬剤であり, 両者の混合投与は吸着阻止法として有効であることが示唆された.

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