日本輸血細胞治療学会誌
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総説
新興再興感染症と血液製剤の安全性
古田 里佳
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2023 年 69 巻 6 号 p. 617-623

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抄録

新型コロナウイルスの大流行は世界に大被害をもたらしたが,輸血感染症を引き起こさなかった.このパンデミックがこれまでの新興再興感染症と大きく異なっていた点は感染力の強さや変異の速さというウイルス学的側面に加えて,宿主である人間側の科学技術力であった.病原体の高感度検査法は迅速に開発・製品化され,ワクチンや抗ウイルス薬も目を見張る開発スピードで利用可能となった.今回の状況から,今後のパンデミックにおいても同様な対応が期待されている.

近年,ヒト共生微生物について次世代型大量並列シーケンシング(Next Generation Sequencing/Multi-Parallel Sequencing:NGS/MPS)技術を用い,次々と新規微生物が報告されている.NGS/MPS技術を用いた解析から,ヒトの種々の臓器・組織の細胞に多様なウイルスが感染している事実も報告され始めている.ウイルス感染症や菌血症の場合を除いては無菌とされていた血漿もそのような組織のひとつであり,健康人の血漿中にはほぼ100%何らかのウイルスが循環している.この事実を踏まえ,より安全な血液製剤とは何かを考えてみたい.

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© 2023 日本輸血・細胞治療学会
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