2023 年 84 巻 2 号 p. 316-320
症例は74歳,女性.9年近く前に右大腿ヘルニアに対してメッシュ留置を伴う手術歴がある.4年余り前に盲腸癌pStage III bに対し腹腔鏡下結腸部分切除術(D3郭清)を行い,術後補助化学療法も行った.1年前に腹部CTで右鼠径部腫瘤影を指摘され,徐々に増大を認めた.3カ月前より右鼠径部痛が出現し,PET-CTで同部へのFDG集積を認めた.盲腸癌の再発を疑い,腹腔鏡下および右鼠径部前方切開による腫瘤摘出術を施行した.肉眼的にはメッシュ中央付近の腹壁を首座とする40mm大の腫瘤で,腹腔内播種を疑う所見は認めなかった.病理組織学的には高分化~中分化の管状腺癌で盲腸癌の再発と考えられた.腫瘍は腹壁側からメッシュを圧拝し,一部で繊維の間隙に浸潤するように増生しており,播種などの直接転移よりは血行性転移が想定された.また,メッシュを用いる腹壁ヘルニア手術は日常的な診療であるが,留置から4年後に切除された盲腸癌の再発に関与した可能性が示唆された.