日本臨床外科学会雑誌
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症例
胃癌に合併した右胃大網動脈瘤破裂の1例
矢野 智之川瀬 寛本谷 康二
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キーワード: 右胃大網動脈瘤, 破裂, 胃癌
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2023 年 84 巻 10 号 p. 1597-1603

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抄録

症例は64歳,女性.2カ月前からふらつきがあり,嘔吐・吐血で救急搬送され入院となった.入院時の胃内視鏡検査で,胃体部に4型の胃癌および潰瘍底に露出する動脈瘤を認めた.腹部造影CTでは胃内に露出した7.5mm大の右胃大網動脈瘤を認め,同部位周囲の胃壁の肥厚ならびにリンパ節転移が疑われた.入院3日後に大量の吐血後にショック状態となり,緊急手術を施行した.開腹時,腹腔内に出血はなく,全て消化管内に出血していた.右胃大網動脈瘤の破裂と診断し,流入ならびに流出部血管を結紮後に幽門側胃切除術を施行した.摘出標本では胃癌の潰瘍底に,破裂したと考えられる動脈瘤の血管壁を認めた.術後第15病日に退院し,化学療法を施行したが,術後11カ月で原病死した.右胃大網動脈瘤破裂を伴った胃癌の1例を経験した.胃内に破裂する症例は極めて稀であるが,ひとたび破裂すると容易にショック状態になることがあるため,迅速な診断と治療を念頭に置く必要がある.

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