2023 年 84 巻 10 号 p. 1553-1564
臓器灌流障害(malperfusion)は,急性大動脈解離における最も重要な病態の一つであり,解離した内膜が分枝内に入り込み分枝血流が障害されるstatic obstruction,偽腔側から内膜フラップが圧迫され真腔血流が低下するdynamic obstruction,およびその両者の混在であるmixed type obstructionにより発症する.解剖学的には,malperfusion症例は,弓部大動脈に内膜亀裂,いわゆるentryが位置する頻度が高く,偽腔が開存し遠位側大動脈に解離が進展していることが多い.
臓器灌流障害の中でも,冠動脈虚血・脳虚血・腸管虚血はいずれも重篤であるが,大動脈修復手術より先に虚血臓器の灌流を優先させる治療戦略が近年注目されている.虚血臓器の早期再灌流のためには,aortic teamによる診療アプローチが重要であり,治療成績向上の鍵となる.