日本臨床外科学会雑誌
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症例
遺伝性球状赤血球症に対する脾摘により化学療法が可能となった乳癌の1例
豊田 知香安藤 二郎竹前 大
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2022 年 83 巻 8 号 p. 1403-1406

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抄録

症例は57歳,女性.20歳時に遺伝性球状赤血球症(HS)と診断され,溶血性貧血のため定期的に輸血をしていた.

左乳房腫瘤自覚を機に左乳癌cT2N0M0 Stage IIAと診断され,手術を施行した.術後診断はpT2N1M0 Stage IIBとなり,術後補助療法として化学療法・内分泌療法・温存乳房照射を予定した.

術後化学療法を開始後,貧血・総ビリルビン値上昇を認め,HSによる溶血が悪化したと考えられ,化学療法は中止となった.

術後2年で肝臓・脾臓に転移巣を認め,今後化学療法を行う可能性を考慮し,溶血の予防策として脾臓摘出術を行った.その後,内分泌療法施行するも肝臓,骨,リンパ節に転移が出現したため,化学療法施行とした.溶血性貧血の進行はなく,安全に化学療法を施行できた.

われわれは,脾臓摘出術後に安全に乳癌再発に対する化学療法が実施可能となったHSの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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