日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
緊急手術を血管内治療により回避できた下行結腸間膜損傷の1例
岡本 紗和子玉井 宏明佐藤 文哉上遠野 由紀山口 竜三
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 82 巻 5 号 p. 920-924

詳細
抄録

患者は44歳,男性.3mの高さから転落,左側腹部を強打した.搬送時ショックバイタルであったが,急速大量輸液により改善した.造影CTで下行結腸背側の大量血腫と造影剤の血管外漏出を認め,下腸間膜動脈領域の活動性出血と診断した.腸管虚血の懸念はあったが止血のため経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization: TAE)を先行し,後日腸管虚血を評価し,その程度によって手術適応を決める方針とした.下腸間膜動脈造影で下行結腸の辺縁動脈損傷と判断し,TAEを行った.術後血行動態は安定し,カテコラミン持続注射からも離脱した.翌日のCTでの下行結腸の浮腫状変化と下部消化管内視鏡での小範囲の粘膜壊死所見から腸管虚血と診断し,下行結腸切除・吻合を施行した.経過良好で,術後第8病日に退院した.

著者関連情報
© 2021 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top