日本臨床外科学会雑誌
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症例
膵管癒合不全を背景として尾側膵切除術後に遅発性膵液瘻を認めた膵癌の1例
渡邉 隆太郎浅井 浩司鯨岡 学森山 穂高渡邉 学斉田 芳久
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2021 年 82 巻 4 号 p. 784-788

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抄録

今回,われわれは尾側膵切除術(distal pancreatectomy:DP)を施行した後に,膵管癒合不全を背景とした遅発性膵液瘻による膵仮性嚢胞を認め,副乳頭切開を併施した経乳頭的および経胃的ドレナージ術が奏効した1例を経験したので報告する.症例は72歳の女性で,膵尾部癌に対してDPを施行した.術後経過は良好で,13日目に退院となった.術後6カ月目の腹部CTで膵切離断端に術後遅発性膵液瘻に伴う仮性嚢胞を認めた.EUSガイド下経胃的ドレナージを施行し嚢胞は縮小したが,その後に施行したERCPにて膵管癒合不全の併存を確定診断した.膵液瘻の原因として膵管癒合不全による膵液流出障害が考えられ,副乳頭切開および膵管ステント留置術を施行した.その後,外来にて経過観察を行っていたが,嚢胞の増大は認めなかった.DP術後に膵管癒合不全を認めた場合には,副乳頭切開による膵管減圧を併施することで遅発性膵液瘻の発生を予防し得ると考えられた.

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