日本臨床外科学会雑誌
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症例
多発腎嚢胞を誘因とした横行結腸宿便性腸閉塞による閉塞性大腸炎の1例
坂下 勝哉金岡 祐次前田 敦行高山 祐一高橋 崇真桐山 宗泰
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2021 年 82 巻 4 号 p. 756-760

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抄録

症例は68歳,男性.既往に多発腎嚢胞あり.腹痛,腹部膨満を主訴に当院を受診した.腹部は膨満しており,右下腹部に圧痛を認めたが腹膜刺激徴候は認めなかった.腹部単純CTでは巨大な多発腎嚢胞を認め,横行結腸に6cm大の糞石とその口側腸管の拡張を認めた.血液検査所見では白血球数7,420/μl,好中球比率89.3%,CRP 32.6mg/dLと著明な炎症反応の上昇を認めた.宿便性腸閉塞による閉塞性腸炎を疑い,緊急手術を施行した.まず,視野確保のために左の巨大な腎嚢胞を穿破した.横行結腸に硬便を触れ,口側腸管の拡張および漿膜の虚血性変化を認めたため,結腸右半切除術を施行した.術後は集中治療を要したが,合併症なく術後11日で軽快退院した.横行結腸を起点とした宿便性腸閉塞による閉塞性大腸炎は極めて稀であり,腎嚢胞による腸管の圧排により硬便が形成されたと考えられた.また,血液検査で炎症反応の上昇を認めた場合は,閉塞性大腸炎の併発を念頭に置き,手術を考慮する必要がある.

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