日本臨床外科学会雑誌
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症例
腸回転異常症が併存した小腸多発真性憩室穿孔の1例
赤嶺 洸太浅井 大智山崎 信義小林 昭広緒方 賢司鈴木 正章
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2021 年 82 巻 4 号 p. 737-741

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抄録

症例は44歳,男性.生来1日に数回の下痢便と腹部膨満を伴う生活を送っていた.3日前より腹痛と腹部膨満感が増悪し当院を受診した.下腹部を最強点とする腹部全体の自発痛と圧痛を認めた.血液検査での炎症上昇と,腹部CTにおいて小腸間膜内ガス像と膿瘍形成を認めたため,小腸穿孔の診断で緊急手術を施行した.また,盲腸は右上腹部に位置しており,術前より腸回転異常を認識していた.術中所見としては,穿孔部位と思われる小腸は一塊となっており,口側腸管に白色硬化した狭窄部位や捻じれを伴うような小腸と小腸憩室を多数認め,150cmの空腸を切除した.病理組織学的所見では複数の真性憩室を認め,一部周囲に膿瘍形成を認めた.以上より,空腸憩室穿孔による汎発性腹膜炎と診断した.小腸憩室は稀な疾患であり,なかでも真性憩室の頻度は少ないが穿孔症例の死亡率は高く,術前診断困難な腹膜炎症例を診た際に鑑別診断の一つとして挙げることは重要である.

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