日本臨床外科学会雑誌
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症例
乳腺acinic cell carcinomaの1例
谷田部 悠介長内 孝之中川 剛士滝口 典聡エーカポット パンナチェート
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キーワード: 腺房細胞癌, 乳腺, 予後
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2021 年 82 巻 4 号 p. 684-689

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抄録

乳腺acinic cell carcinoma(AcCC)は1996年に報告された,唾液腺腺房細胞癌と類似した組織像を呈する極めてまれな浸潤性乳管癌である.

症例は68歳の女性で,前医で右乳癌術後の経過観察中に左乳房腫瘤を指摘され,当科を紹介受診した.左外側上領域に径1cm大,弾性硬可動性良好で表面粗造な腫瘤を触知し,生検で浸潤性乳管癌と診断された.全身検索では,唾液腺を含め他に悪性を疑う所見は認めなかった.センチネルリンパ節は陰性で,左乳房温存術を施行した.病理組織学的検査では,類円形の核を有するやや好酸性な異形細胞が,小型腺管状や小胞巣状の浸潤性増殖パターンを呈していた.免疫組織学的検査では,p63およびCD10陽性筋上皮との二相性は見られず,浸潤が認められた.S-100,α1-AT,唾液腺アミラーゼ,p53,CEA,EMA,GCDFP-15が陽性,Mammaglobin,ER,PgR,HER2が陰性,Ki67は最大21%陽性であり,AcCCと診断した.術後化学療法は行わずに経過観察中であるが,術後4年7カ月の時点で無再発生存中である.

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