2021 年 82 巻 1 号 p. 38-45
症例は68歳,女性.右乳癌(T2N0M0 Stage IIA)に対し右乳房部分切除を施行した.術後7年目に突然の労作時呼吸困難が出現,徐々に症状は進行し体動困難となったため当院を受診した.胸部造影CTで明らかな器質的疾患はみられなかった.心エコーで右心負荷所見を認め,肺血流シンチグラフィーで両側肺末梢に多発性楔状欠損が認められた.肺動脈吸引細胞診では異型細胞を認め,病歴,臨床症状,細胞診より乳癌再発に伴う,pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(以下PTTM)と診断した.抗凝固療法,呼吸循環管理を継続するも急激に全身状態が悪化し,入院後4日目に永眠した.PTTMは急速に呼吸不全が進行する,予後不良な病態である.担癌患者に発症した突然の呼吸困難,右心不全に対しては,本疾患も念頭に置き早期の診断確定,治療介入が望まれる.