日本臨床外科学会雑誌
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症例
虫垂憩室を併存した虫垂goblet cell adenocarcinomaの2例
杉浦 孝太三宅 秀夫永井 英雅吉岡 裕一郎柴田 耕治湯浅 典博吉川 佳苗
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2021 年 82 巻 12 号 p. 2208-2216

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抄録

症例1は73歳の男性で,右下腹部痛を主訴に当院を受診した.膿瘍形成性虫垂炎と診断し,2日間の保存的治療後に虫垂切除術を施行した.切除虫垂に複数の憩室を認め,病理組織学的に虫垂goblet cell adenocarcinoma(GCA)と診断された.断端陽性であったが追加切除の同意が得られず,術後34カ月に肺転移,癌性腹膜炎で死亡した.症例2は39歳の男性で,右下腹部痛を主訴に来院した.急性虫垂炎の診断で抗菌薬治療を行ったが改善せず,翌日に虫垂切除術を施行した.切除虫垂には憩室の多発,虫垂壁の限局性壁肥厚,その末梢側に潰瘍と穿孔を認めた.病理組織学的に虫垂GCAと診断された.漿膜下層まで浸潤を認めたため,2カ月後に腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.pT3N0M0,Stage IIと診断され,術後補助化学療法としてXELOX療法を4コース施行し,術後11カ月の現在,無再発生存中である.虫垂腫瘍には虫垂憩室を伴うことがあり,急性虫垂炎の画像診断や病理学的検索には注意が必要である.

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