2021 年 82 巻 12 号 p. 2194-2200
症例は56歳,女性.心窩部痛,嘔吐が改善しないため,精査目的に入院した.入院時の血液検査では異常を認めなかった.腹部超音波検査では,幽門輪近傍に28mm大の嚢胞性病変を認めた.上部内視鏡検査では,胃内腔から腫瘤が十二指腸へ逸脱しているかのような所見を認め,十二指腸球部をほぼ閉塞している状況であった.生検結果では,悪性所見を認めなかった.第2病日の腹部造影CTでは,腫瘤はやや縮小していた.第4病日に施行した再内視鏡検査では,腫瘤は十二指腸球部に存在していたが,陥凹・縮小しており,閉塞は解除されていた.第9病日の上部消化管造影検査では,緊満した透亮像を認めた.確定診断には至らなかったが,再閉塞の可能性を危惧し,幽門側胃切除を施行した.切除標本でも腫瘤は緊満しており,再増大していた.病理組織学的にはBrunner腺嚢胞と診断した.Brunner腺嚢胞による十二指腸球部閉塞の報告は稀であるため,若干の文献的考察を加えて報告する.