2021 年 82 巻 12 号 p. 2156-2162
症例は59歳,男性.検診での上部消化管造影検査にて異常を指摘され,当院を受診.胃噴門部に2型腫瘍を認め,腹部食道への浸潤を認めた.食道胃接合部に発生した噴門部胃癌と診断し,経裂孔的に腹部食道を切離して胃全摘術(D2郭清)を施行した.病理検査にて低分化型腺癌と扁平上皮癌を認め,腺扁平上皮癌と診断した.腺癌と扁平上皮癌は中央域付近で衝突状に混在しており,腺扁平上皮癌の中でも特に稀な衝突型であった.著明なリンパ節転移を伴っていため,術後補助化学療法としてS-1+CDDP併用療法を行い,術後6年経過し無再発生存中である.今回われわれは,食道胃接合部に発生した衝突型の胃腺扁平上皮癌の1例を経験したため報告する.