日本臨床外科学会雑誌
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症例
胃蜂窩織炎反復後の胃異所性膵癌の1例
長野 太智定永 倫明吉田 倫太郎本村 貴志本坊 拓也松浦 弘
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キーワード: 異所性膵, 胃蜂窩織炎, 胃癌
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2020 年 81 巻 5 号 p. 866-872

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抄録

症例は51歳,女性.19年前に発熱・腹痛を認め,精査にて胃前庭部の壁肥厚,嚢胞形成を伴う粘膜下腫瘍様病変が認められ,胃蜂窩織炎として保存的治療を行い,その後同様の病態を7回繰り返しいずれも保存的治療にて軽快していた.1カ月前より食欲低下・腹痛が出現し,上部消化管内視鏡検査で胃前庭部の粘膜下腫瘍様病変が増大し,CTで大網にも腫瘤を認め,悪性腫瘍を疑い手術を施行した.術中所見は腹膜播種を有する胃癌と考えられ,幽門狭窄回避目的に幽門側胃切除術を施行した.術後病理組織検査は,粘膜下腫瘍様胃癌の組織型は粘液癌で,腫瘍内にラ氏島の痕跡を認め,異所性膵由来の粘液癌が示唆された.本症例は異所性膵が臨床的に繰り返す胃蜂窩織炎の原因で,また長い経過の中で胃癌を発症したと推察された.胃粘膜下腫瘍は確定診断が困難な場合が多く,長い経過の中で癌化の可能性を考慮した,より慎重な経過観察が必要であったと考えられた.

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